オーソモレキュラーの母子栄養への応用 – 第5回母子栄養懇話会学術集会

第5回母子栄養懇話会学術集会 -6月2日-

溝口徹先生から「母子栄養について」オーソモレキュラーの視点から、大変有益な、わかりやすいお話をして頂きました。

母体に炭水化物を大量に食べさせる今の栄養指導とは、まったく違います。↓ご紹介します。

【オーソモレキュラーと母子栄養】

6月2日(土)は第5回母子栄養懇話会学術集会にて管理栄養士さん向けに『オーソモレキュラーと母子栄養』についてお話しする機会を頂きました。
演者は自分が、座長は宗田マタニティクリニックの宗田先生が務めて下さいました。

妊娠成立にまず大切なのはタンパク代謝が出来ているかどうかの正確な判断で、通常の血液検査でも測定する項目ALT / AST、LDH、BUNはタンパク代謝を見る上で非常に重要なポイントです。

BUNは通常腎機能の評価と言われていますが、オーソモレキュラー的な概念から見ると、タンパク質がちゃんと摂れて代謝されているかの指標になります。

BUNが低いのはタンパク代謝が悪いことを示しますが、タンパク代謝においては妊娠成立や病態改善のためには必ず同化〉異化でなければならないのです。

また妊娠を希望される場合、微小の炎症や血栓を見逃さないことも重要なポイントになります。
特にピルなどホルモン剤を使っている女性はCRPの値が多少高くなる傾向があります。
オーソモレキュラーでは、CRPは0.05以下を至適範囲としており、いわゆる「基準値」の概念とは異なることもここでお伝えしました。

CRPと同じく血清銅が高値になるのも炎症を示唆しており、これは血栓ができやすい状態になっているということなのですが、オーソモレキュラーではこの血栓をどのくらい溶かしているかの指標としてDダイマーを小数点第2位まで細かく測ることで微小な血栓溶解を評価しています。

Dダイマーは高くても低くても問題なのですが、ホルモン剤を使用している女性はこの値が高く出る傾向にあります。
つまり血栓ができやすい状態であるため、血栓を作りにくくするEPA/DHAやできた血栓を溶かす作用をもつナットウキナーゼの併用が大切になってくるのです。

次に、鉄や亜鉛の重要性をお話ししました。
妊娠中の鉄欠乏は産後のうつ・不安・認知機能・ストレスと深い関係にあります。
そして産後のコレステロール低下は不安、怒り、うつの有病率と有意差があることも知られています。

赤ちゃんは生まれてから約1年間は深刻な鉄欠乏状態です。
生後2、3ヶ月で鉄・亜鉛不足になるのですが、鉄や亜鉛不足のお母さんから生まれた赤ちゃんは母乳から充分な鉄や亜鉛を得られないので、重度の不足状態となり、これはアトピーやおむつかぶれなど皮膚のトラブルにも繋がっていきます。
このように母体の栄養を満たすことは赤ちゃんの健やかな発育の上でも非常に大切なことなのです。

他にも妊娠に重要な栄養素としてビタミンDが挙げられます。
ビタミンDはその受容体が子宮内膜・子宮筋層・卵巣・子宮頸部・乳腺に存在しており、
ビタミンDの体内濃度が低い方は卵胞発育や妊娠率が低下しますし、ビタミンD濃度が高い女性は体外受精の妊娠率が高くなるというデータも存在します。

そして甲状腺は女性ホルモンとのクロストークがあるので、厳密にコントロールすることが大切です。
甲状腺ホルモンは卵巣において卵胞の成長と成熟を促しますが、甲状腺が低下すると、卵巣機能が落ちて卵胞の成長を阻害したり排卵障害の原因になってしまいます。
潜在性甲状腺機能低下症の場合は上記理由からも妊娠率は低下するため、不妊治療においても、不定愁訴の改善においても「甲状腺機能の正常化」は非常に重要なポイントになるのです。

今回は女性の妊娠と出産に絡めて母子栄養からオーソモレキュラーを知ってもらうべくお話しさせて頂きました。
お話を聞いてくださった管理栄養士の皆さんには、ぜひ明日からの栄養指導に今回得た知識を生かして頂けたらと思っています。

溝口先生Facebook投稿より引用させて頂きました。

溝口 徹 先生

新宿溝口クリニック 院長
新宿溝口クリニック Facebookページ